さよならリグレット

f:id:transmitter:20130618221434j:plain

GWに同窓会をした帰り道、ふと友人が「アイツの墓に手を合わせられていないのが心残りでなぁ」とつぶやいて、
そういえば僕も折に触れてその事を気にしていたことをまた思い出した。

同窓会は2,3年前からメンバーを一人欠いていて、彼は警察のお世話になったりしながら結局、自分で死んだ。
ある日突然「何かあったらしい」とメールがあり、ググると小さな記事が見つかり、
“病院に搬送”が翌日には“搬送先の病院で死亡”になり、葬式もなく、ご両親に連絡もつかず、終わった。

いつか読んだ伊藤計劃の小説で描かれてたディストピアでは、人々がお互いに情報を開示し監視し合っていて、
その世界で「プライベート」という言葉は意味を剥ぎ取られ、SEXと同義語になっていたけど、
彼の抱える問題もプライベートなもので、簡単には触れられたくないし触れるべきでない領域で、
「何かしてあげられたのでは?」そんな思いを差し挟む余地もない距離感を保ったまま彼は死んだ。

そんな訳で、僕たちは泣く事も怒る事も出来ずちゅうぶらりんに放り出されて、
大して気に入っていなかったけどずっと使ってたグラスを割ったような、
ちょっとした喪失感と違和感を抱えたまま…ではしんどいので盛大に忘れ、たまに追憶する日々を送っている。

ほんとは墓前に立ったって掛けてやる言葉なんて浮かんで来ないし、
ほんとは心残りなんてないくらい清々しい気持ちで死を受け入れているんだけど、
それじゃなんだか悪い気がして心残りだなんて言っているのは薄々気付いている。
まぁでも彼が投げっぱなしてきた死をこっちが受けっぱなしてもいいんじゃないかなって。
もうしばらくジャグリングして消したり増やしたりしながら飽きるまで遊ぼう。